活動報告 report

建設環境委員会行政視察報告(3)

最終日の7月28日は宮城県庁と仙台市役所を訪ね、先進的な水道事業への取り組みを学びました。

3 宮城県上工下水一体官民連携運営事業について(7月27日 宮城県宮城県庁)
宮城県企業局では、給水収益が減少する一方で送水管等の更新需要が増大するなど、厳しさを増す経営環境においても持続可能な水道経営を確立するため、「官民連携」により民の力を最大限活用した「宮城県上工下水一体官民連携運営事業」(みやぎ型管理運営方式)を令和4年4月1日から始めている。上水、工業用水、下水の3つの水道事業を民間に委託し、効率的な運営を図っている。この方式は、公共サービスの維持と経済的な持続性を両立させるために採用され、以下のようなメリットが得られている。
1:効率的な運営:水道事業を民間に委託することで、専門的な知識や経験を持つ企業が運営を担当でき、効率的な運営が可能となる。
2:経済的な持続性:水道事業は公共サービスであり、信頼性を保ちながら経済的に持 続可能であることが求められるが、民間企業との連携により、経営の持続性を高めることができる。
3:技術革新と最新の設備:水道事業を民間に委託することで、最新の技術や設備を導入しやすくなり、サービスの向上や効率化が図れる。
4:リスク分散:公共機関だけでなく、民間企業も運営に参加することで、リスクを分 散でき、災害時などにも迅速な対応が可能となる。
5:専門的な人材の活用:水道事業の運営には専門的な知識や技術が必要だが、民間企業の人材を活用することで、適切な管理と運営が行える。
「みやぎ型管理運営方式」は、効率的な運営や持続可能な経営を目指すための一手段として他地区でも採用されるようになってきており、宮城県企業局の試算では20年間で約337億円の事業費削減を見込んでいる。安全・安心な水の供給、安定的な汚水処理は行政として最も大切な事業でもあり、永遠のテーマと言える。本市においても「みやぎ型」を経営基盤強化の先進モデルとして検討する時期と考える。  

4 水道事業DX連携協定と管路更新最適化サービスについて(7月27日仙台市)
 
仙台市は推計人口110万人、東北地方で唯一の政令指定都市であり、経済規模も大きく宮城県民の約半数が居住している。現在市の水道局が運営するシステムは、業務ごとに独立しておりシステム間でのデータ連携が困難なため、課題解決に向けた取り組みが急務とされ重要なカギとなるのが一層のDX推進とされた。企業や大学など異業種・異分野の組織を巻き込んだ各組織の持つ技術やアイデアを組み合わせが必要と考えられたため、仙台市が設置している「クロス・センダイ・ラボ」を介しての連携が整い、市と大手ITコンサルティング会社の株式会社NSDは、次世代水道事業DX基盤の構築を推進するために、以下の具体的な取り組み(連携協定)を本年3月に締結した。
1:デジタル技術の活用: 水道事業において、センサーデータ、IoT、AI、ビッグデータなどのデジタル技術を活用して、効率的な運営とサービス向上を図る。
2:業務プロセスの最適化: 業務プロセスの改善と効率化を目指し、デジタルツールを導入する。これにより、作業時間の削減やエラーの軽減が期待される。
3:顧客サービスの向上: デジタルチャネルを活用して、市民の要望や問い合わせに迅速かつ適切に対応する仕組みを構築する。
4:インフラ管理の強化: デジタル技術を活用して、水道施設の点検、保守、修繕の効率化を図る。
現在の課題抽出と解決を目指し、継続的なDX推進により業務のスマート化から「マンパワー」が創出され、業務ノウハウのスムーズな継承が図られることが期待される。
 
また、仙台市水道局が保有する約4,500kmの水道管路の更新最適化に関して、丸紅株式会社がAI・機械学習を活用したサービスを提供している。
1:老朽度評価: 水道管路の老朽度をAI・機械学習により評価し、更新計画に活用。
2:想定使用年数の設定: 各水道管路の想定使用年数を評価し、長期的な更新ニーズの分析。
3:効果的な更新計画: 管路更新の優先度を評価し、破損回避などの効果を最大化
この取り組みにより、水道管路の適切な更新が行われ、良好な水道サービスの提供と持続可能な水道事業運営がサポートされることが期待されている。
 
5 まとめ
東日本大震災の爪痕が残る東北地方の視察であったが、地震の揺れだけでなく津波によって起きたトラブルから原発の爆発事故までが起き、放射能が漏れ出してしまうと言う、あってはならない事態が起きてしまった。「原発の危機」によりエネルギーの見直しが叫ばれてはいるが、水素エネルギーの利活用には課題が多いことを認識できた。
また、上下水道事業の安定した持続・継続は行政の使命であるが、人口減少に伴う諸問題も共通しており、技術革新に負う所もあるが先進地の事例を参考にして、10年・20年ではなく、50年・100年先を見据えた議論が必要との思いを強くした。

太田正徳の広報誌
「わだ市議プレス」

  • 和田市議プレス2023年12月 Vol.1