建設環境委員会行政視察報告(1)
猛暑の7月26日~28日の3日間、東京から東北方面へ令和6年度松本市議会建設環境委員会の行政視察が行われました。初日は東京都内の株式会社WOTA様を訪ね、「小規模分散型水循環システム」について学びました。以下、報告とします。
1 小規模分散型水循環システムについて(7 月 25 日 東京都中央区)
地球上のあらゆる生命の維持に欠かせない水。気候変動や災害、人口の減少等により時 として入手や安定供給が困難な場合が発生する。 WOTA 株式会社の開発した「小規模分散型水循環システム」は、排水を回収し再生して循 環利用する以下のような仕組みを提供している。 1. 排水回収:家庭や建物から出る排水(雨水や生活排水)を集める。 2. 膜処理:回収した排水を膜でろ過し、不純物や微生物を除去する。 3. 生物処理:生物反応により有機物を分解し、水質を改善する。 4. 殺菌処理:細菌やウイルスを除去するための殺菌処理を行う。 5. 再利用:処理された水を再び同じ家に給水する。 このシステムは、一度使った水の 98%以上をその場で 再生して循環利用する、人にも環 境にも優しい テクノロジーと言える。自然の中や災害時の水道問題解決に向けて注目さ れており、どのような場所でもシャワーや手洗いができるポータブル水再生システム 「WOTA BOX」と、自治体や施設などで設置されている水循環型手洗いスタンド「WOSH」 の実証実験が全国で行われている。特に「WOTA BOX」は今年 1 月に発生した能登半島地 震の被災地にて、温水シャワーセットを提供し大勢の被災者に喜ばれたと言う。1 台当 たり約 600 万円と高価であるが、本市においても災害時の水不足や衛生問題の改善・解 決に備え、危機管理の観点からも数セットを万が一に備えたいと思った。
また、少子化による給水人口減少に伴う水道料金収入の減少と、水道施設の老朽化に伴 う管路の更新などの設備投資の増加が、全国的に過疎地などで課題となっている。 水道料金の値上げや、官民連携・水道事業者同士の広域連携といった動きもあるが、人 口規模の少ない地域ほど、水道財政収支のバランスが難しくなる。加えて浄水場からの 距離が離れている地域では配管が長くなることから配管費用も膨らみ、さらに影響は大 きくなる。WOTA 株式会社の小規模分散型水循環システムは、独自開発した水処理の自律 制御技術により、使った水をその場で処理し、また使える水に戻す再生循環の仕組みで ある。雨水や家から出た排水を処理し、その水を再び同じ家に給水する。具体的には、 雨水に膜処理・殺菌処理を行ない飲用水として、雨水および家から出た排水(トイレ以 外)に生物処理・膜処理・殺菌処理を行ない生活用水として、トイレ排水に生物処理・殺 菌処理を行ないトイレ用水として給水するという自己完結型である。水補給ゼロで安定 的な水供給が実現し、今後において過疎地や遠隔地での水道事業の低コスト化が見込め る技術であり、広い中山間地を抱える本市でも実用化に向け研究していきたい。