松本城の保存修理について現地説明会が行われました。

国宝松本城天守の地震時の安全性を確保するために、耐震補強工事に向けた調査が行われています。木造文化財構造物は150年周期での解体修理と、30年周期の維持修理を行うことで、その価値の損失を最小限に抑えられるとされています。1955年に昭和の解体大修理が行われており根本的な修理を行う必要はないのですが、将来に備え安全確保水準を満たす経過的な耐震補強工事が必要となります。鉄骨フレーム補強を想定して、基礎部分にどのような対策が取れるか床を剥がして調査をしています。

天守一階 基礎部分の内部調査
地震時の石垣崩落にも備えねばならず、国宝であるため意匠を損なわない、部材を傷めない、史跡への影響を与えないことなどに十分配慮した耐震対策工事基本計画を策定し、今後関係省庁と協議のうえ耐震補強工事が行われる予定です。

石垣のすべり対策調査
また松本城は本丸・二の丸・三の丸と、それぞれを囲む内堀・外堀・総堀の3重の堀を設けた城郭部分と城下町で構成されています。大正8年から昭和初年にかけて埋め立てられ宅地化された城の南・西外堀ですが、今後の復元整備に向けた発掘調査と研究に取り組んでいます。

令和5年度までに25か所を発掘調査
観光客で賑わいを見せる松本城も、江戸時代から何度も堀の浚渫(しゅんせつ・泥ざらい)が行われたことが古文書等から分かっています。令和5年度より7年間をかけて内堀・外堀・総堀の浚渫工事を行い、最深部では150cmまで泥を汲み上げます。夏場の観光シーズンを避けての工事となりますが、特に北アルプスと天守の景観が素晴らしい内堀は2年間の工事期間を要します。市庁舎の東側にある総堀は令和11年度の工事終了を予定しています。丁寧な保存活動により、いつまでも市民の宝であって欲しいものです。

内堀浚渫工事の様子